
灯篭には、春日灯篭や雪見灯篭、織部灯篭などさまざまな種類があり、それぞれ形状や高さ、庭の中での見え方が異なります。
灯篭はもともと灯火を納めるための設備として使われてきましたが、日本庭園では景観を構成する石造物としても重要な役割を担っています。
灯篭を庭に取り入れる際は、単に好みのデザインを選ぶのではなく、庭の広さや植栽、池などとの景観のバランスを考えることが大切です。
- 春日灯篭:背が高いため、広めの庭で設置すると存在感が出て庭のアクセントになりやすい
- 雪見灯篭:背が低いため池や水辺、背の低い植栽などと合わせやすく、景観を崩さない
など
今回は、代表的な灯篭の種類や特徴を初心者にも分かりやすく解説したうえで、庭を美しく見せるためのサイズ選びや配置方法について紹介します。
代表的な灯篭の種類と特徴を解説
代表的な灯篭として、春日灯篭・雪見灯篭・織部灯篭・活込灯篭・置き灯篭があります※。
※雪見灯篭・織部灯篭は活込灯篭・置き灯篭の一種ではありますが、今回は代表的な灯篭の事例として別途で紹介しています。
これらは用途は同じなのですが、種類によって部位の形状や有無が変化します。
基本的な灯篭のパーツは主に以下の6つです。

上図の6つの部位をベースに、ほかの装飾を加えたり、あるいは削ったりして灯篭のデザインや名称は変わります。
灯篭は種類によって高さや形状、適した配置場所が異なります。
まずは、それぞれの特徴や、実際に見られる代表的な寺院・文化財・庭園を確認してみましょう。
| 種類 | 主な特徴 | 合わせやすい場所 | 実際に見られる代表例 |
|---|---|---|---|
| 春日灯篭 | 高さがあり、代表的な灯篭 | 広めの庭、園路、寺社の参道 | 春日大社(奈良県) |
| 雪見灯篭 | 背が低く、大きく広がった笠と低い重心が特徴 | 池、水辺、低木周辺 | 兼六園(石川県) |
| 織部灯篭 | 竿を地中へ埋め込む形式が多く、細身で茶庭になじみやすい | 茶庭、露地、蹲踞周辺 | 北野天満宮(京都府) |
| 活込灯篭 | 基礎を設けず、竿の下部を地面へ埋め込んで据える | 茶庭、園路沿い、植栽周辺 | 桂離宮(京都府)など |
| 置き灯篭 | 竿を持たないものなど、小型で低い位置に据える形式 | 坪庭、池のほとり、玄関周辺 | 厳島神社(広島県)など |
大型の春日灯篭は庭の目印となる景物として使いやすい一方、雪見灯篭や置き灯篭は低い位置に配置して、水辺や植栽と一体になった景観を作るのに適しています。
また、庭にとことんこだわるのであれば、灯篭が作られた経緯や形状の由来など、細かいところにも気を配れば、より通好みの庭園に仕上げることも可能です。
ここでは、上記の灯篭の特長や逸話などを、それぞれ深掘りしてみましょう。
春日灯篭
春日灯篭は、日本庭園でよく見られる代表的な灯篭の一つです。
奈良県の春日大社に由来した灯篭で、平安時代より長く作られている非常に格式高いデザインの灯篭です。
灯篭を構成するすべてのパーツが含まれており、高さがあるため庭の中でも存在感を出しやすい特徴があります。
そのため、ある程度奥行きのある庭や園路沿い、樹木の間など、縦方向の高さを活かせる場所に適しています。
一方で、小規模な坪庭の中央に大型の春日灯篭を置くと、灯篭だけが目立ちすぎて庭全体が狭く見える場合があります。
設置する際は、灯篭単体の大きさだけで判断せず、周囲の樹木の高さや石組、建物から灯篭までの距離を含めて考えることが重要です。
そんな春日灯篭で有名な場所は、やはり春日大社です。
約3千基にも上る数の灯篭があり、2月と8月には全てに火を灯す「春日万燈籠」が実施されています。
参考:春日大社ホームページ
雪見灯篭
雪見灯篭は、低い位置に大きな笠を設けた形状が特徴の灯篭です。
また、基礎部分である竿がなく、支柱代わりに3~4本の脚で支える形状をしているのも特長の一つでしょう。
名前の由来は諸説あり、笠に積もった雪を眺めるといったものから、池の近くに設置すると、火が水面に浮いて見えることから浮見(うきみ)や浮火(うきび)と呼ばれていたものが雪見に変わったとも考えられています。
その由来のとおり、雪見灯篭は特に池や流れなどの水辺と組み合わせやすく、水面や周囲の石組、植栽と一緒に眺められる位置に配置すると自然な景観を作りやすくなります。
雪見灯篭には複数の脚を持つものもあり、どっしりとした低い重心によって、庭の一角に視線を留めるポイントを作れることも特徴です。
春日灯篭のように高さで存在感を出すのではなく、横方向への広がりを利用して庭の景観に落ち着きを与えてくれるでしょう。
ただし、大きな笠を持つ雪見灯篭は、背が低くても想像以上に設置面積を必要とします。坪庭など限られた空間に取り入れる場合は、高さだけでなく笠の直径まで確認しておきましょう。
雪見灯篭で有名なのが、石川県にある兼六園の「徽軫(ことじ)灯篭」です。
兼六園の象徴とも言われており、二本の脚で支えられているのが特長です。
片方を自然石で支えており、風景に溶け込んでいるその姿は映えスポットとしても知られています。
織部灯篭
織部灯篭は灯篭を支える基礎がなく、直接竿を地面に埋め込んで設置します。
織部灯篭は後述する活込灯篭の一種ではありますが、こちらの名前で呼ばれることも多いです。
細長い竿を持つ比較的すっきりとした姿が特徴で、茶庭や露地などに取り入れやすい灯篭です。
名前の由来は戦国武将である傍ら、千利休の高弟でもある茶人としても知られる古田織部がデザインした灯篭であることから、その名前がついています。
また、織部灯篭は別名「キリシタン灯篭」とも呼ばれており、竿の部分に十字模様やマリア様と思しき像が彫られていたのが、その名の由来となっています。
大型の春日灯篭と比べると主張を抑えやすく、飛石や蹲踞、植栽など周囲の景物と組み合わせながら庭の一部として見せやすいです。
縦長のため、狭い庭でも比較的取り入れやすい灯篭で茶庭との相性が非常に良く、考案者が茶人であったことからも茶室用途で考案された側面も思わせてくれます。
ただし、周囲の植栽より極端に高いものを選ぶと灯篭だけが浮いて見えるため、庭全体との高さのバランスを確認する必要があります。
織部灯篭で有名なのは、京都府の「北野天満宮」です。
三光門東側の梅の木付近に立札と一緒に設置されており、竿部分に薄っすらと人型の彫刻が見られます。
また、北野天満宮で有名な灯篭には大黒天の灯篭もあります。
こちらは織部灯篭ではありませんが、商売繁盛や受験合格のゲン担ぎのパワースポットとして有名です。
参考:北野天満宮ホームページ
活込灯篭
活込灯篭(生込灯篭)は、竿の下部を地面に直接埋め込むようにして据える形式の灯篭の総称です。
名前の由来も地面に直接埋める、つまり「活け込む」事からきています。
大きな基礎を見せずに設置できるため、石造物としての重量感を抑えながら、植栽や飛石などと自然になじませやすい特徴があります。
庭の中では、園路の脇や植栽の間、蹲踞周辺などに配置すると、周囲の景観を邪魔せず視線を引き付けるアクセントになります。
また、地面へ埋め込む深さによって完成時の見え方が変わる点にも注意が必要です。
竿を浅く据えすぎると灯篭が必要以上に高く見え、反対に深く埋めすぎると本来の形状を活かせなくなる場合があります。
そのため、活込灯篭は製品そのものの高さだけを見るのではなく、施工後に地上へどの程度の高さが現れるかを考えてサイズを選ぶことがポイントです。
活込灯篭で有名なのは、京都府にある「桂離宮」です。
織部灯篭も含め、さまざまなデザインの活込灯篭を見ることができます。
しかし、場所が皇室関連の施設のため、見学には事前申込みが必要になります。
置き灯篭
置き灯篭は、比較的小型で低い位置に据えるタイプの灯篭です。
活込灯篭と同じく、地面に直接置くことが名前の由来です。
大型の石灯篭ほど広い設置スペースを必要としないため、坪庭や玄関周辺、中庭など限られた空間にも取り入れやすい特徴があります。
庭の主役として大きく見せるというより、植栽や景石、飛石などの近くに配置し、小さな景観のまとまりを作る使い方に向いています。
例えば、玄関から庭へ向かう視線の先や、窓から庭を眺めた際に自然と目に入る位置に置くと、小型でも十分なアクセントになります。
ただし、小さいからといって複数の石造物を狭い範囲へ集めすぎると、庭全体が窮屈に見える場合があります。
置き灯篭を活かすためには、灯篭そのものだけでなく、その周囲にあえて余白を残すことが重要です。植栽や景石との距離を調整しながら、庭全体の中で自然に視線が集まる位置を探すとよいでしょう。
有名な置灯篭としては、鉄製の置灯篭である「与次郎灯篭」が挙げられます。
安土桃山時代~江戸時代初期の名工である辻与次郎考案の置灯篭であり、広島県の厳島神社の唐金灯篭や京都府の北野天満宮など、さまざまなところに歴史ある置灯篭が設置されています。
灯篭の基礎知識
灯篭は、もともと灯火を入れて周囲を照らす役割を持つものでしたが、日本庭園では景観を構成する重要な要素としても発展してきました。
現在では、実用的な照明としてだけでなく、植栽や飛石、手水鉢などと組み合わせて庭の雰囲気を整える目的で設置されるケースも多く見られます。
また、天然石で作られた灯篭は屋外で長期間使用できる一方、経年による風化や苔の付着などによって徐々に表情が変化していく点も特徴です。
ここでは、灯篭の基礎知識として、主な役割や耐久性などについて解説しましょう。
照明としての役割
灯篭の基本的な役割は、火袋の中に灯火を入れて周囲を照らすことです。
石灯篭では、中央付近に設けられた火袋に火口や窓があり、そこから光が外へ漏れる構造になっています。
ただし、現代の庭では庭全体を明るく照らす主照明として使うというより、足元や景物を柔らかく照らし、夜間の庭に陰影を作る役割で活用する方が適しています。
例えば、園路の脇や蹲踞の近くに灯篭を配置すると、昼間は石造物として景観の一部になり、夜間は灯りによって庭の雰囲気を演出できます。
灯篭を照明として活用する場合は、明るさだけでなく「どこを照らしたいか」を意識することが大切です。
光源が直接目に入る位置ではなく、植栽や石組を間接的に照らすように配置すると、落ち着いた景観を作りやすくなります。
庭園のアクセントとして
灯篭は、庭の中で視線を集めるアクセントとしても活用できます。
特に日本庭園では、灯篭だけを単独で置くのではなく、飛石・手水鉢・蹲踞・植栽などと組み合わせて景観を構成するのが一般的です。
建物から庭を眺めたときの視線や、植栽との前後関係、周囲の余白まで考えて配置することで、庭全体を引き締めるアクセントになります。
灯篭の耐久性
石灯篭の具体的な耐久年数は、およそ千年以上あるとされています。
事実、現存する最古の石灯篭は奈良県の當麻(たいま)寺にあり、奈良時代(710~794年)の頃から存在しています。
灯篭に使用されることが多い花崗岩は硬質な石材で、多少の雨風で激しく劣化が進むような心配はありません。
一方で、石材だからといって状態がまったく変化しないわけではありません。
長期間屋外に設置すると、雨風や凍結、湿気などの影響を受け、表面の風化や汚れ、苔の付着などが生じます。
文化財として残る石灯篭にも風化の跡が確認されているため、長く使用するには設置環境にも配慮することが重要です。
また、大型の灯篭は複数の石材を積み重ねて構成されているため、地盤の沈下や傾きにも注意が必要です。
特に背の高い春日灯篭などを設置する場合は、見た目だけでなく基礎部分を安定させることが、安全性と耐久性を保つうえで重要になります。
エクステリアとして灯篭を活用する場合
灯篭をエクステリアとして取り入れる場合は、単に庭の空いている場所へ設置するのではなく、庭全体の広さや視線の流れ、植栽や建物とのバランスまで考えることが大切です。
具体的には、以下のポイントを把握する必要があります。

特に灯篭は石造物で存在感が強いため、サイズや高さ、配置場所を誤ると、庭の中で灯篭だけが浮いて見えることがあります。
反対に、庭の構成に合わせて適切に配置すれば、視線を誘導したり、植栽や景石を引き立てたりするアクセントとして活用できます。
庭の広さや視線の抜けを考慮したサイズと高さのバランス調整が大事
灯篭を選ぶ際は、庭の広さに対して大きすぎないか、高さが周囲の景観と合っているかを確認することが重要です。
例えば、広い庭では高さのある春日灯篭などを配置しても周囲とのバランスを取りやすい一方、坪庭のような限られた空間では、大型の灯篭を置くと圧迫感が出ることがあります。
小規模な庭では、雪見灯篭や置き灯篭など、比較的低い位置に重心があるものを選ぶと、周囲の植栽や景石となじませやすくなります。
また、灯篭を見る位置も重要です。
庭へ入った瞬間に灯篭の全体が見える配置だけでなく、建物の窓や園路から見たときに植栽の間から一部が見えるよう配置すると、庭に奥行きを感じさせやすくなります。
文化財に指定されている庭園でも、灯篭単体ではなく、植栽・飛石・景石・建物などとの関係を考えて配置されている事例が多く見られます。
千葉県にある「旧堀田正倫庭園」では、主屋の周囲に庭木・灯篭・手水鉢・景石などを配置し、建築との調和を図っています。
灯篭のサイズを決める際は、本体だけを見るのではなく、「庭全体の中でどの程度の存在感になるか」を確認することがポイントです。
漫然と設置するのではなく照明としての機能美を活かした設置
灯篭は庭の装飾として置くだけでなく、本来持っている照明としての役割を意識して配置すると、より自然な景観を作りやすくなります。
例えば、園路の脇や蹲踞、水辺など、もともと人の動きや視線が集まりやすい場所に配置することで、灯篭を庭の景観と一体化させやすくなります。
重要なのは、庭の中央に目立つように置くことではなく、灯篭の光が周囲の植栽や石組を照らす場面まで想定することです。
例えば、植栽の手前に灯篭を配置すると、夜間に火袋から漏れる光によって葉や枝に陰影が生まれます。
池のそばに設置すれば、水面や周囲の石組と組み合わせた景観を演出できます。
実際に「松田屋ホテル庭園」では、滝や流れ、池泉などの水辺に雪見灯篭や山灯篭が配置されています。
灯篭を単体で見せるのではなく、水辺や園路と組み合わせることで庭園全体の景観を構成している例です。
このように、灯篭は「どこに置けば目立つか」ではなく、「周囲の景物とどのようにつながるか」を考えて配置すると、本来の機能美を活かしやすくなります。
プロに相談するのが最も失敗しない
灯篭の設置で失敗を避けるには、造園業者や庭師などの専門家へ相談するのが最も失敗しにくい方法です。
さまざまな設置例を紹介しましたが、やはり自身の庭とほかの庭とでは景観も植えている樹木も異なります。
見た目だけで設置場所を決めると、地盤の状態や搬入経路によって施工が難しくなる場合があります。
また、庭の景観は灯篭だけで決まるものではありません。
植栽の高さや成長後の枝張り、飛石や景石の位置、建物から見たときの視線など、複数の要素をまとめて考える必要があります。
専門家へ相談すれば、現在の庭だけでなく、将来的な植栽の成長や庭の見え方まで考慮したうえで、灯篭の種類やサイズ、設置位置を検討できます。
特に大型の灯篭を設置する場合は、購入後に置き場所を考えるのではなく、事前に庭全体を確認したうえでサイズや種類を決めることが大切です。
灯篭の設置でお困りなら造園資材感にご質問・ご相談ください!

灯篭の種類を把握して庭造りを本格的に
今回は、灯篭の種類や設置例など、基礎知識を紹介しました。
灯篭を選ぶ際はデザインだけで決めるのではなく、庭の広さや植栽、園路、水辺、建物からの見え方まで含めて検討することが大切です。
また、灯篭は単体で目立たせるのではなく、植栽や飛石、景石、蹲踞などと組み合わせることで、より自然で奥行きのある景観を作れます。
石製の灯篭は、設置後に簡単に移動できるものではありません。
購入してから配置を考えるのではなく、庭全体の構成を決めたうえで、種類やサイズを選ぶことが失敗を防ぐポイントです。
それぞれの灯篭の特徴を理解し、庭の広さや周囲の景観に適したものを取り入れることで、庭に自然なアクセントと落ち着きのある雰囲気を加えられます。



